暑くなってきたので、暇潰しに若干怖い話でも…
4.納得するという選択
※これは同じ会社に勤めていた同僚から聞いた実際にあったお話です。
私が勤めていた中小企業には遅番・早番制度という一種の鍵当番があった。
これは当番になった人間が、その日の帰り際に各フロアの戸締りや電気の
消し忘れ等をチェックし、セキュリティロックをして社屋そのものの施錠を行う。
で、翌日には他の社員よりも早く出社し、社屋の解錠とセキュリティの解除を行う
というものだった。普段よりも遅く帰り早く出社するわけだが、その当時の会社は
その分の残業代はしっかりと出ていたので、私を除いて文句を言う人間は多くは
無かった。
ある日、私が鍵当番となった。私は大きくは無いとはいえ、地下1階から6階まで
社内の各フロアをチェックしなければならない面倒臭さに辟易していた。
その日は夜10時頃まで仕事をしていた。連日の忙しさもあって、かなり疲れている
中での鍵当番は心底嫌だった…。
「こんな忙しい時期に鍵当番なんて最悪だな。ろくに仕事もしない、
アホ社長にでもやらせれば良いのにな。」
そんな事をブツブツと独りで呟きつつ、さっさとチェックを済ませて帰ろうと
思っていた。そんな中、3階まで戸締りのチェックと消灯の確認を済ませた時に、
ちょっと嫌な話を思い出した。
社屋の[4階]は天井が高く、ちょっとしたホールのような作りになっており、
普段あまり人が使う事がないフロアであった。
その4階へ、今の私と同じように鍵当番で見回りの為に同僚がやってきた時の事だ。
戸締りの確認をしていると不意に上の方から
「フフフフフ…」
と、女の笑い声のようなものが聞こえてきたという。
それとは別の同僚も、4階にて資料等の片づけを夜までやっていた時に同じような、
「フフフフフ…」
と言う女の声を聞いている…らしい。
更には別の同僚が同じ4階の女子トイレにて、やはり今の私と同じように鍵当番の
チェック中に、突然トイレの扉を内側から
バンバンバンバンバンッ!
と叩く音が聞こえ、確認してはみたが誰も居なかった…と言う。
このように[4階]は幾つか妙な現象が噂になっているような場所だった。
原因についての具体的な噂は無かったが、創業は70年近く、今の社屋も築20~30年程
という我が社ではある。そんな年数を経た組織や建物ならば、色んな曰く因縁も
確かにあるかも知れないし、そう言った物が噂の現象の原因かも知れない…。
しかし、そうは思いながらも私としては半信半疑。同僚達が全員嘘を言っている
とは思わないが、話のネタの為に大袈裟に表現したり、何かの誤認が原因で錯覚を
しただけでは無いかと思っていたのだ。とは言え、気味の悪い話ではあるので長居は
無用と、先ほど以上に早く済ませようと決めた。
階段で4階のフロアへやってくる。普段からあまり人気が無い所であるせいか、
他のフロア以上にしーんと静まり返っているように感じた。電気はしっかりと
消灯されており、戸締りも全く問題が無かった。噂のある同階の女子トイレも同様に
チェックしたが、こちらも問題無かった。少し拍子抜けしたような感覚もあったが、
正直、少し安心したのも事実だ。妙な現象に遭遇せずに済んだのだから…。
6階までのチェックを終え身支度を済ませ施錠をし、私は社屋を出た。
会社の前の駐車場を横切りながら、自分の車へ向かって歩いていた時、ふと社屋を
見上げてみると一か所、明かりの点いた小窓があった…。
「あれ?どっか自分で消し忘れたかなぁ?」等と思っていると、
ある事に気がついた。
その小窓は、例の[4階]の女子トイレの換気用の物だったのである。
これに気が付いた途端、背中にゾクりとした冷えた感覚が走った。
しかし考えてみれば、少しでも早く済ませようとして慌てた結果、単純に
チェックの為に自分で点けた電気を消し忘れただけだとも思えた。
当然そのままにしておくわけにも行かないので、私は社屋内へと戻った。
先ほどとは異なり各フロアを見て回る必要は無いので、階段では無くエレベーターで
4階へと向かった。4階へ着いてみると、廊下の奥にある女子トイレの方がぼんやりと
明るい。やはり電気は点いてしまっているようだ。
女子トイレに向かいながら、ふと、しーんと静まりかえる今の空間が
妙に気になった。
自分の車へ向かって歩いていた時、周りの道路にはそこそこ車が走っており、
他のフロアではその車の行き交う音が聞こえていた。
しかし、ここ[4階]では聞こえにくい。このフロアだけ構造が違うのか、何なのか
分からないが、この妙な静けさと暗さから少しビビりながらも女子トイレへ向かう。
女子トイレに着き、恐る恐る扉を開ける…。
中は電気がただ点いており、当然の如く誰も居なかった。
ホッとしながら私はミスの無いように、
「今、女子トイレの電気が点いているのを確認しました。」
「スイッチを押して、電気を消しました。」
「消灯の確認が出来ました。これで自分は帰ります。」
と、自分の行動を声に出しながら消灯を行った。奇妙だが、これは怖さも紛らわす
目的も含まれた行為であった。足早にエレベーターに乗り込み、社屋を出た。
何事も無く、再び社屋を出る事が出来たので安堵しつつ駐車場を横切りながら、
社屋を見上げてみる。ところが…
「…あ、あぁ…」
思わず声にならない声が漏れた。先ほどと同じ[4階]の女子トイレの電気が、
また点いている…!
今度は間違えは無いはずだ。自分の行動を声に出しながらチェックして、
消灯まで確実に行ったのだ…!再び背中にゾクゾクっと、冷気が走るのを感じた。
しかし一呼吸おいて、私は妙に納得したような諦めのような感覚が頭をよぎり、
「なるほどな。」
と何故か呟くほどに、奇妙なまでに腑に落ちたような気になり、そのまま自分の
車に乗り込んで家に帰ってしまった。
今になって思えば、この行動は正しかったのかも知れない。
なぜならば翌日の早朝、社屋の解錠に出向いた際に4階へ確認しに行った所、
電気は点いていなかったからだ。
あの時「妙に納得した気」になって無ければ、何が起こったか分からない…。
少しは暇潰しになりましたでしょうか~?
この長文・駄文をここまで読んでくれた人は、今日は[優勝]です!
ありがとうございました、お疲れ様です(^q^)
先日、TVで最近では珍しくなった心霊系の番組を放送していたので、
それ感化されるような形で思い出し、ここに書き殴ってしまいましたww
この話の中の「フフフフフ…」って女の笑い声のようなものを聞いたのは、
実は自分なのですが…本当にただ聞こえただけだったので、話としては
成り立ちにくいように感じ、同僚の体験談をメインに据えて纏めてみました(;'∀')
まぁ所謂、落ちの無いような…起承転結の「結」がイマイチな話ばかり知っている
自分ですが、これからも無駄にぼんやりと頑張って行こうと妄想しております(^q^)
今回はこんな感じで。それでは(^^)/